「顧問やってます」は書かないと伝わらない|士業の業務内容の書き方

業務範囲・対象顧客・得意分野を明示する三点の整理

ホームページ制作とWeb運用に20年携わる中で、税理士事務所・税理士法人のサイト制作を実際に担当した経験をもとに書いています。

この記事の要点

士業のホームページで業務内容を書くときは、顧問業務のように自分が当然だと思っている仕事から先に書く。業務範囲・対象顧客層・得意分野の3点を、依頼者が使う言葉で明示すると、読んだ人が「自分が頼んでいい相手か」をその場で判断できる状態になる。税務・財務・会計・経理の区別がついていない経営者もいるため、言葉は中学生でも分かるトーンまで落として書く。

公開日 2026-10-07

事務所のデスクで書類を広げ、業務範囲を書き出している士業の手元

士業のホームページに業務内容はどう書けばいいのか?

受けている仕事を、依頼者が最初に口にする言葉で一つずつ並べるのが出発点です。業務範囲・対象顧客層・得意分野の3点が揃っていると、読んだ人はその場で依頼できるかを判断できます。逆に専門用語で業務名だけが並んでいると、判断材料がないまま読み終わります。

業務内容の欄で起きやすいのは、業務名が単語のまま置かれている状態です。「顧問業務」「記帳代行」「決算・申告」と並んでいても、依頼したことがない人には、何をどこまでやってもらえるのかが見えません。やっていることを変える必要はなく、同じ内容を依頼者の言葉に開くだけで伝わり方が変わります。

開き方の一例として、書き換えの型を挙げます。実際の中身は事務所ごとに違うので、自分の運用に合わせて置き換えてください。

よくある書き方開いた書き方(一例)
顧問業務定期的にお会いして、数字の内容をご説明し、お金の使い方のご相談に乗ります
記帳代行領収書と通帳のデータをお預かりして、帳簿を作ります。自社で入力している場合は、内容のチェックだけでもお受けします
決算・申告年1回、決算書と税務申告書を作って提出します。前期分だけのご依頼もお受けします
創業支援これから会社を作る方の数字の計画づくりと、金融機関に出す書類の準備を一緒に進めます

書く順番としては、次の3点をこの順で置くと読み手の判断が早くなります。

  • 業務範囲:どこからどこまでやるのか(定期的な顧問が中心か、事務作業も引き受けるのか、単発も受けるのか)
  • 対象顧客層:どんな規模・段階の事業者を主に見ているのか
  • 得意分野:その中でも特に相談が多い領域はどこか

この3点のうち1つでも欠けると、読んだ人は「たぶん自分も対象だろう」という推測を自分でしなければなりません。推測を相手にさせないことが、問い合わせの前の最後の一押しになります。

なぜ「顧問をやっています」は書かないと伝わらないのか?

専門家にとって当然すぎる業務は、本人の意識から説明対象として外れます。顧問をやっているのは当たり前だと感じていても、依頼する側からは全く分かりません。当然だと思っている業務こそ、言葉にして載せる価値があります。

事業を始めたばかりの経営者は、税務・財務・会計・経理という4つの言葉の区別すらついていない状態から相談に来ることがあります。その状態の人が読むページに専門用語だけが並んでいると、内容は伝わりません。税理士事務所のサイトを担当するときは、まず税理士の話を一生懸命に聞いて、制作側の自分でも理解できる内容まで落とし込んでから原稿を書く、というフローを取っていました。トーンの基準は、中学生でも分かるかどうかです。言葉選びそのものについては、士業の発信・問い合わせに関する記事で別途扱っています。

当然だと思って省かれやすい情報

  • 定期的な顧問契約があること、その中で何をしているか
  • 依頼を受けてから初回面談までの流れ
  • 記帳を自社でやっている場合でも依頼できるのか
  • 決算だけ、相談だけといった部分的な依頼を受けるのか
  • 面談は訪問か来所かオンラインか

どれも業界の中では説明不要の内容です。だからこそ抜けます。見つけ方は単純で、「毎回同じ説明を口頭でしている項目」を思い出すことです。口頭で繰り返している説明は、そのままページに置くべき情報だと考えています。

対象顧客はどこまで具体的に書けばいいのか?

事業の規模と段階で区切って、主に受けている層を名指しで書きます。起業予定者、小規模事業者、中小企業、大手のどこを中心に見ているかが分かれば、読んだ人は自分が範囲内かどうかをその場で判断できます。判断できる状態を作ることが、対象顧客を書く目的です。

対象顧客を書かないページは、全方位に向けて書かれているように見えて、結果的に誰にも自分向けだと思われません。次のような区切りで、主な層を先頭に出します。

  • これから起業する方:会社を作る前の相談、創業時の数字の組み立て
  • 一人で事業をしている方・小規模事業者:記帳から申告まで含めて任せたい段階
  • 社員のいる中小企業:定期的に数字を見ながら判断したい段階
  • 一定規模以上の企業:経理担当者がいて、確認と助言が必要な段階

書き方の形

「どなたでもご相談ください」だけでは層が伝わらないため、中心を示してから幅を添える形にします。たとえば「◯名まで」のように具体的な線を一本入れ、そのうえで「それ以上の規模もご相談ください」と添える、という構成です。段階や規模の線が入ると、読み手は自分の現在地と照らし合わせられます。

対象外に触れるときの書き方

受けていない領域は、断る言い方ではなく、どこが中心かを示す言い方に置き換えます。「大企業は対応していません」ではなく「小規模な事業者の月次顧問を中心にしています」と書けば、同じ情報が前向きな形で伝わります。読んだ人が自分で振り分けられる状態になることが、この書き方の目的です。

打ち合わせテーブルで資料を指しながら説明する様子

得意分野を明示すると何が変わるのか?

この分野に強いという一点がはっきりしているだけでも、集客につながる可能性があると考えています。同じ資格を持った相手が複数並んだときに、選ぶ理由になるのは資格ではなく、分野の近さです。得意分野は業務内容の一部ではなく、独立した見出しで出します。

資格名と業務一覧だけが並んだページは、他の事務所のページと区別がつきません。区別をつけているのは、どの分野の相談が多いかという情報です。ここが書かれていないと、読み手は所在地や料金といった比べやすい条件だけで選ぶことになります。

得意分野の切り出し方

  • 事業の段階:創業期の立ち上げ、拡大期の管理体制づくり、事業の引き継ぎ
  • 業種:実際に顧客が多い業種を具体的に挙げる
  • 相談の種類:資金の調達、数字を使った経営判断、社内の経理のしくみづくり
  • 体制:担当が変わらない、オンラインで完結する、初回面談を長めに取る

裏づけとセットで置く

得意分野を書くときは、そう言える理由を隣に置きます。顧客の多い業種名、過去に扱った相談の種類、実務で何年その領域を見ているかといった事実です。あわせて、顔写真・経歴・この事業を立ち上げた思いや背景を載せたプロフィールが揃うと、分野の主張に人格がついて読まれ方が変わります。プロフィールの作り方そのものは別記事で扱っているので、ここでは「得意分野と裏づけを隣に置く」という一点に絞ります。

業務内容と対象顧客を洗い出す手順は?

頭の中で考えるより、直近の実際の依頼内容から逆算したほうが早く終わります。請求書の明細や契約書の業務欄に、すでに業務範囲が書かれています。手元の資料から逆算すれば、原稿の素材はそのまま揃います。

  1. 直近1年の請求明細や契約書から、実際に受けた業務をすべて書き出す
  2. その業務を、顧客が最初に相談してきたときの言葉に置き換える(「月次顧問」ではなく「毎月数字を見てほしい」)
  3. 業務を「毎月やること」「年1回やること」「単発で受けること」の3つに分類する
  4. 顧客を事業規模と段階で分け、件数が多い順に並べる
  5. 件数が多い領域、相談が深くなる領域を得意分野として先頭に置く
  6. 業界の外にいる人に読んでもらい、分からなかった単語に印をつけてもらう

最後の工程をとばさない

6番目の工程が、専門用語を外すための実質的な検査になります。制作側として原稿を書くときも、まず自分が理解できる言葉になるまで聞き込んでから書いていました。自分が説明できない文章は、読者にも伝わりません。社内の人ではなく、業界の外にいる人に読んでもらうのが条件です。

書いた後、何を更新し続ければいいのか?

業務内容と対象顧客を書き終えたら、次は変わっていく情報を出し続ける段階に入ります。法律は毎年のように変わるため、その内容を噛み砕いて分かりやすく提示し続けることが、専門家のサイトでは効きます。更新を止めないために外すべきは、書く作業です。

制度や法令の改正内容は、公的機関の公式情報が一次ソースになります(2026年9月時点)。個別の判断にかかわる部分は、最新の法令・公式発表、または担当する税理士に確認してください。サイト側の役割は、その内容を依頼者が理解できる言葉に開き直して置いておくことです。

更新の対象になるもの

  • 改正された内容が、自分の顧客層にどう影響するか
  • 相談でよく聞かれる質問と、その答え
  • 依頼の流れや料金の考え方に変更があったとき
  • 新しく受け始めた業務、受ける対象を広げたとき

書く作業を外すという考え方

更新が止まるのは、書く作業に時間が取られるからという声をよく聞きます。だとすれば、そこを外せば続きます。もしデジは、月に一度話すだけで、話した内容が記事になって積み上がる仕組みです。収録1本は5分程度で、そこから記事が1〜5本生まれ、公開は原則1日1本、月およそ30本のペースになります。記事1本ごとにサイト記事とnote用の書き下ろし、SNS6媒体の投稿文が付きます。

検索から問い合わせが入り始めるまでは、一般的に半年から一年かかります。積み上げ型だからです。その代わり、積み上がった記事は簡単には崩れません。まずは業務範囲・対象顧客層・得意分野の3点を書き切り、そのうえで更新を止めない形を作るのが順番です。

よくある質問

業務内容は一覧で並べるだけでは足りないのですか?

業務名の一覧だけでは、依頼したことがない人には範囲が伝わりません。たとえば顧問業務なら「定期的にお会いして数字をご説明し、お金の使い方のご相談に乗ります」というように、実際の運用に合わせて中身まで開いて書くと、読んだ人が依頼後の状態を想像できます。業務の中身を変える必要はなく、同じ内容を依頼者の言葉に置き換えるだけで判断材料になります。

対象顧客を狭く書いて大丈夫でしょうか?

中心を示してから幅を添える書き方にすれば、該当する人には自分向けだと伝わり、外れる人も相談の可否を自分で判断できます。たとえば「これから起業する方と、従業員◯名までの事業者を中心にお受けしています」のように具体的な線を一本入れる形です。対象が書かれていないページは、全方位に見えて誰にも自分向けだと思われないという問題が残ります。

専門用語を外すと、内容が浅く見えないでしょうか?

浅く見えるのは、用語ではなく中身が省かれているときです。税理士事務所のサイトを担当するときは、話を一生懸命聞いて自分でも理解できる内容まで落とし込んでから書き、中学生でも分かるトーンを基準にしていました。専門性は、どの分野の相談が多いかという具体性と、その裏づけで示せます。

得意分野がはっきりしない場合はどうすればいいですか?

直近1年の依頼内容を請求明細や契約書から書き出し、件数の多い領域と相談が深くなる領域を並べると見えてきます。業種、事業の段階、相談の種類、対応体制の4つの軸で切り出すのが実務的です。この分野に強いという一点がはっきりしていると、それだけでも集客につながる可能性があると考えています。

書いた内容はどのくらいの頻度で見直せばいいですか?

業務範囲と対象顧客は、受ける仕事や体制が変わったタイミングで直します。加えて、法律は毎年のように変わるため、改正内容が自分の顧客層にどう影響するかを噛み砕いて出し続ける形が合います。制度の詳細は公的機関の最新の公式情報で確認してください(2026年9月時点)。

参考・出典

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