顧問か単発か|行政書士のホームページ設計は方向性で変わる

決めないまま集客を始めると、動線も料金の見せ方も定まらない

本記事は、ホームページ制作とWeb運用に20年携わってきた立場から、行政書士のホームページ集客について語った内容をもとに整理した見解・考察です。特定の案件の成果を示すものではありません。

この記事の要点

顧問契約を増やしたいのか、単発受注を中心にするのか。先に決めないままホームページを作ると、動線も、料金の見せ方も、書く記事のテーマも定まりません。行政書士の受注は単発が多い印象で、顧問契約という形はあまり聞かない、という見方もあります。まず方向性を整理してサイト上に明示する。集客の施策はそのあとで十分間に合います。

公開日 2026-10-27

事務所の机で書類とノートパソコンを並べ、受注の内訳を書き出して整理している様子

顧問契約か単発受注か、決めないままホームページを作ってもいいのか?

決めないまま作ると、サイトの動線が定まりません。顧問と単発では、読者に取ってほしい行動も、信頼してもらうまでに必要な情報量も違うからです。先に方向性を整理し、それをサイトに明示するところから始めたほうが、結果的に早く進むと考えています。

顧問契約は、継続して関係が続くことを前提にした受け方です。単発受注は、1つの案件が終われば一度関係が切れる受け方です。この2つは、読者がサイトに来たときの状態からして違います。

単発を探している人は「この手続きを、いま、いくらで、どれくらいの期間で頼めるのか」を知りたい状態で検索しています。顧問の相手を探している人は「この人と長く付き合えるか」を見ています。前者には手続きごとの説明と見積もり導線が要り、後者には人と考え方の情報が要ります。

方向性が決まっていないサイトには、この両方の要素が中途半端に並びます。トップページに「まずは無料相談」「料金表はこちら」「顧問契約も承ります」が同じ重さで置かれている状態です。読者はどれを押せばいいのか分からず、押さずに離れます。

さらに影響が出るのが、記事やコラムのテーマです。方向性が決まっていないと、手続きの解説と経営者向けの読み物が交互に並び、どの読者に向けたサイトなのかが伝わらなくなります。ページ数が増えてから方向性を決め直すと、手戻りが大きくなると考えています。

事業の方向性を最初に整理し、それをホームページ上に明示する。順番としてはここが先だと考えています。

行政書士の受注は、なぜ単発中心になりやすいのか?

許認可申請や書類作成は、必要が生じたときにその都度発生する仕事が中心になりやすく、受注の形も単発になりがちです。行政書士で顧問として受けているという話はあまり聞いたことがない、という見方もあります。これは収入の安定に直接関わります。

単発中心の受注には、毎月ゼロから集客し直すという構造がついてきます。今月取れた分は、来月また同じだけ集客し直す必要がある。商談に強い人ほど、その集客を自分の足で埋めようとして、紹介まわりや交流会に時間を使うことになります。

一方で顧問契約は、取れた分が翌月以降も積み上がります。新規獲得の負荷は下がりますが、取るまでの距離は長い。単発は「この手続きを頼めるか」で決まりますが、顧問は「この人と付き合うか」で決まるからです。

どちらが優れているという話ではありません。問題は、どちらを増やしたいのかを決めないまま集客を始めることです。

  • 単発を増やしたい:検索で見つけてもらい、手続き単位で比較されても選ばれる状態をつくる
  • 顧問を増やしたい:人と考え方を知ってもらい、相談相手として指名される状態をつくる

この2つは、作るページも、書く記事も、問い合わせフォームの項目すら変わります。なお、行政書士が扱える業務の範囲は制度として定められており、内容は変わりうるため、所管省庁や日本行政書士会連合会の公式情報で確認してください(2026年9月時点)。

顧問前提と単発前提で、ホームページの何が変わるのか?

読者の状態が違うため、入口ページ、CTAの文言、料金の見せ方、記事のテーマは変わってきます。以下の表は、取材で挙がった論点(対応業務の範囲、対応エリア、対面で会えるか、プロフィール、依頼フローの明示)を「読者の状態」という軸で整理し直した考え方で、設計上の推論を含みます。

下の表は確定した正解ではなく、読者の状態から逆算して項目を並べ直したものです。そのうえで、どこが実際の論点とつながっているかを表の下で補足します。

項目単発受注を増やしたい場合顧問契約を増やしたい場合
読者の状態いま必要な手続きがある長く相談できる相手を探している
主な入口ページ業務(手続き)別ページプロフィール・考え方・相談事例
CTAの文言この手続きを依頼する/見積もりを依頼する一度話を聞いてみる/継続の相談をする
料金の見せ方手続き単位の目安が意思決定に効きやすい金額だけでは判断しにくく、範囲の定義が併記されていると読みやすい
記事のテーマ手続きの流れ、必要書類、期限、よくあるつまずき経営判断に関わる相談、制度変更の読み解き
判断に必要な情報対応エリア、着手までの速さ、依頼フロー人柄、理念、付き合い方、連絡の取りやすさ

このうち「対応エリア」「直接会えるかどうか」「依頼フロー」は、発注側が知りたがる基本情報として実際に挙がった論点です。書類やデジタルのやり取りが苦手な層には「直接会えます」と書いてあること自体が効く、という話もありました。これらは単発・顧問のどちらでも必要ですが、単発では「頼めるかどうか」の判断材料として前面に、顧問では「付き合い方」の説明として後ろに置かれる、という違いが出やすいと考えています。

一方で「プロフィール」「理念」は、顧問を狙う場合に比重が上がります。継続前提だと、手続きの説明より人のほうを見られるからです。

両方載せること自体は可能です。ただしその場合も、トップページでどちらを主にするかは決めておく必要があります。主が決まっていないトップページは、読者から見ると「何屋なのか分からないページ」になります。

料金はホームページに載せたほうがいいのか?

方向性によって答えが変わります。単発受注を増やしたいなら、手続き単位の目安があると問い合わせの判断がしやすくなります。顧問を増やしたいなら、金額だけでは判断しにくいため、対応する範囲の定義を添える考え方もあります。

単発で探している読者は、依頼する前に比較します。比較の材料が金額とスピードしかない状態では、金額が書かれていないサイトは候補から外れやすくなります。幅がある仕事なら「◯◯円〜」「内容により変動」と範囲で書く形もあります。

顧問の場合は事情が違います。月額だけを書いても、読者は「その金額で何をしてもらえるのか」が分からないため判断しにくい。そのため、金額と合わせて対応する範囲や相談の頻度をどう定めているかを併記する、という考え方もあります。どこまでを定義として書くかは事務所ごとに違うはずで、一律の正解があるとは考えていません。

そして、料金を載せるか載せないかで迷い続けている場合、迷いの正体は料金表示ではなく事業の方向性であることが多いと考えています。単発を主にするのか顧問を主にするのかが決まれば、載せ方はそれに合わせて決まっていくからです。

ホワイトボードに2つの方向性を線で分けて書き分けながら整理している手元

「発注しやすい」と「この人に発注しよう」は何が違うのか?

専門用語を避け、対応業務とエリアを明示すれば、発注はしやすくなります。ただし発注しやすいことと、あなたに発注しようと思われることは別のフェーズです。顧問を増やしたい場合ほど、後者に必要な情報の比重が上がります。

発注側から見ると、専門用語が多いサイトは正直なところ内容が分かりません。何ができる人なのかが読み取れなければ、検討の土俵にすら乗りません。用語を噛み砕き、対応業務の範囲と対応エリアを明示する。ここまでが「発注しやすい」状態をつくる作業だと考えています。

しかし、なんとなく頼む人はまずいません。頼んだあとに何が起きるのか、自分が何をすればいいのか、どれくらいで終わるのか。これが具体的に書かれている状態をサイト上でつくれていると、「この人に頼もう」に近づきます。プロフィール、依頼フロー、対面で会えるかどうかといった個別の書き方は、それぞれ別記事で扱っています。

本記事の論点に絞って言えば、この「もう一段」は顧問契約を狙う場合ほど比重が上がります。単発なら手続きの説明で足りることも、継続前提なら人を見られるからです。顧問を増やしたいのに、業務一覧だけが並んでいるサイトになっていないか。ここは確認する価値があります。

方向性はどういう順番で決めればいいのか?

過去の受注を単発と継続に仕分けし、どちらを増やしたいかを1つ選ぶところから始めます。選んだ側に合わせて、入口ページ・CTA・記事のテーマを揃えていきます。半々のまま進めるのは、決めていないのとほぼ同じ結果になりやすいと考えています。

以下は整理のしかたの一例です。順番も対象期間も事務所の状況で変わるので、そのまま当てはめる前提のものではありません。

  1. 過去の受注を「単発」「継続」に分け、件数と売上を出す(たとえば直近1年分を目安に)
  2. 増やしたい側を1つ決める。迷うなら、この先どちらで食べていきたいかで選ぶ
  3. 増やしたい側の顧客が、困ったときに検索する言葉を書き出す
  4. その言葉に対応するページを決め、前面に出すものを絞る
  5. トップページのCTAの文言を1種類に決める
  6. 記事やコラムのテーマを、決めた方向に寄せる

本記事の論点に限って言えば、絞る対象は「増やしたい受注形態」で決まります。単発を増やしたいなら、検索される手続き名が前面に来ます。顧問を増やしたいなら、相談領域と考え方が前面に来ます。同じ事務所でも、どちらを選ぶかで前に出すものが入れ替わるということです。

業務領域が広い場合に、そもそもどう絞って見せるのかという話は、別記事「業務範囲が広い行政書士ほどホームページは絞って見せる」で扱っています。絞ったからといって、他の業務を受けられなくなるわけではありません。前面に出す順番を変えるだけです。

決めた方向性は、ホームページのどこに書くのか?

トップページの最初の画面、業務内容ページの冒頭、プロフィールの3か所です。この3か所に同じ方向性が書かれていれば、どのページから入った読者にも伝わります。1か所だけに書いても、検索から直接入ってきた読者には届きません。

検索から来る読者は、トップページを経由しません。「◯◯ 許可 申請」で調べた人は、その業務のページに直接着地します。そこに方向性が書かれていなければ、単発の仕事を探している人として離脱していきます。

書く内容の最低ライン

  • 誰向けか(創業期の会社か、既存事業の許認可更新か、個人か)
  • どの業務を主に扱っているか
  • 対応エリア(オンライン対応の可否も含めて)
  • 単発で受けるのか、継続して関わるのか
  • 直接会えるかどうか

「顧問として継続的に関わっています」と書いていないサイトは、読者から見れば単発対応のサイトです。やっていることと、書いてあることは別です。書いていない限り伝わらない、という前提でページを見直すと、足りない一文が見つかります。

方向性を決めてサイトを直すと、どれくらいで反応が出るのか?

検索から問い合わせが入り始めるまでは、一般的に半年から1年かかります。成果を保証できるものではありません。時間がかかるからこそ、方向性を決めずに記事やページを増やすのは効率が悪くなります。

方向性が決まらないまま記事を何十本も書いてから、あとで顧問中心に切り替えると、書いた記事の多くが方向と合わなくなります。消すか、書き直すか、放置するか。どれを選んでも手戻りです。

逆に、方向性さえ決まっていれば、書く内容は自動的に決まっていきます。顧問を増やしたいなら経営判断に関わる相談と制度変更の読み解き、単発を増やしたいなら手続きの流れと必要書類。毎回「何を書こうか」で止まる時間がなくなります。

セミナーや交流会でリアルに動いている人ほど、名前で検索される回数は増えます。そこで自社サイトが受け止められなければ、検索結果の上にある他社が受け止めます。リアルに投資するほど他社のサイトが強くなる、という状態になりかねません。半年から1年かかる前提で、いま方向性を決めておく意味はここにあると考えています。

よくある質問

顧問も単発も両方やりたい場合はどうすればいいですか?

両方受けること自体は問題ありません。ただしホームページでは、トップページでどちらを主にするかを決める必要があります。主が決まっていないトップページは、読者から見て何を頼める事務所なのか分からなくなり、どちらの問い合わせも減りやすくなります。主を決めたうえで、もう一方は下層ページで案内する形が現実的だと考えています。

料金を載せないと問い合わせは来ませんか?

単発受注を探している読者は比較するため、目安がないと候補から外れやすくなります。幅がある仕事なら範囲表記でも機能します。顧問契約を狙う場合は、月額だけでは何をしてもらえるのかが伝わらないため、対応する範囲の定義を添える考え方もあります。どこまで書くかは事務所の方針次第です。

前面に出す業務は、何を基準に絞ればいいですか?

本記事の考え方では、絞る対象は「増やしたい受注形態」で決まります。単発を増やしたいなら検索される手続き名、顧問を増やしたいなら相談領域と考え方が前面に来ます。絞るのは見せ方の順番であって、受注範囲を狭めるという意味ではありません。絞り方そのものは別記事「業務範囲が広い行政書士ほどホームページは絞って見せる」で扱っています。

サイトを作り直さないと方向性は変えられませんか?

作り直さなくても変えられます。トップページの最初の画面、業務内容ページの冒頭、プロフィールの3か所に、誰向けで何を主に扱い、単発か継続かを書き足すだけでも伝わり方は変わります。構造から直すのは、文言を直しても動きが鈍い場合で十分です。

参考・出典

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