司法書士のホームページは誰が見るかで中身が変わる|読み手の設計

作る前に決めるのは、デザインより先に読み手

ホームページ制作とWeb運用に20年携わる中で、実際に受けてきた相談と、士業のサイト設計について話した内容をもとに書いています。

この記事の要点

司法書士のホームページで最初に決めるのは、デザインでも料金掲載の有無でもなく「誰が見るページか」です。読み手が経営者なら、司法書士がどんな困りごとを解決する人かという説明から要ります。読み手が弁護士など他士業なら、必要なのは業務説明ではなく連携の提案です。読み手が決まると、キャッチコピー・導線・問い合わせ手段の判断が一本につながります。

公開日 2026-10-22

事務所のデスクで、ホームページの構成案を紙に書き出して検討している様子

司法書士のホームページは、まず何から決めればいいですか?

最初に決めるのは「誰が見るページか」です。読み手が決まっていないと、キャッチコピーも導線も料金掲載の判断も決め切れません。デザインの話はそのあとで十分間に合います。

司法書士のホームページを作る・直すときに論点になるのは、ファーストビューのキャッチコピー、ページの動線設計、料金を載せるかどうか、問い合わせ手段をメールにするかLINEにするかSNSにするか電話にするか、といったところです。どれも大事ですが、これらは単体では答えが出ません。読み手が変われば正解が変わる項目ばかりだからです。

たとえば料金を載せるかどうかは、相場感をまったく知らない人に向けるのか、相場を知っている同業・隣接士業に向けるのかで判断が変わります。問い合わせ手段も同じで、日中に電話ができる人とできない人では、置くべき入口が違います。

そのため、順番としては次のように進めると迷いが減ります。

  1. このホームページを見るのは誰かを一つに決める
  2. その人が何を知らないか、何に不安を感じるかを書き出す
  3. 知らないことを埋める説明と、不安を解消する言葉を、ページの前半に置く
  4. そのうえでキャッチコピー・導線・問い合わせ手段を決める

読み手を一つに決めるのは、他の読み手を切り捨てることではありません。ページごとに読み手を分ければ、同じサイトの中で両方に応えられます。最初の一枚をどちらに向けるかを決める、という意味です。

読み手が経営者のとき、何から説明すればいいですか?

司法書士がどんな仕事をする人なのか、という説明から始めます。経営者が相手なら、おそらくそこから説明しないと伝わりません。専門用語を使わず「こういう困りごとを、こういうふうに解決する人です」という言い方に置き換えます。

司法書士という資格の名前は知られていても、どこからどこまでを頼めるのかまでは、経営者側に共有されていないことがよくあります。登記や相続といった言葉は知っていても、自分の今の状況がその言葉に当てはまるのかどうかが分からない、という状態です。この状態の人は、専門用語で書かれた業務一覧を読んでも自分ごとになりません。

そこで、業務名ではなく困りごとの言葉に翻訳します。

  • ×:商業登記、本人確認情報、債権譲渡登記
  • ○:役員が変わったとき、会社の住所を移したとき、相続で名義をどうするか決まらないとき

この翻訳は、説明を薄くする作業ではありません。相手が自分の状況を言い表すときに使う言葉で入口を作り、その奥に正確な業務名を置く、という二段構えにするだけです。入口が困りごとの言葉になっていれば、「これは自分のことだ」と気づいた人が奥まで読み進めます。

専門用語をそのまま置いたときに何が起きるかは、士業のホームページに専門用語を書いても集客は伝わらないでも整理しています。

読み手が弁護士や他士業のときは、何を載せますか?

連携を前提に見に来る相手には、業務の説明よりも協業の提案を載せます。どういう案件で、どういう形で一緒に進められるのかを具体的に書くことが、そのまま問い合わせの理由になります。

弁護士や他士業がホームページを見るとき、その人は司法書士の仕事内容を知っています。知りたいのは「自分の案件をこの人と組んで進められるか」です。したがって、一般向けと同じ業務一覧を見せても判断材料になりません。

載せる内容としては、受けられる案件の種類、どの工程を引き受けるのか、連絡はどの手段で取れるのか、といった協業の進め方が中心になります。こちらから連携の仕方を提案する形で書いておくと、相手は自分の案件に当てはめて読めます。

同じサイトの中で両方に応えたい場合は、トップページで読み手を分岐させ、経営者向けのページと連携向けのページを別に用意します。1枚に混ぜると、どちらの読み手にとっても余計な情報が挟まるページになります。

経営者向けと他士業向けで、具体的に何が変わりますか?

変わるのは説明の深さと、ページの目的です。経営者向けは「司法書士とは何をする人か」から始める説明型、他士業向けは「どう組むか」を示す提案型になります。

項目読み手が経営者読み手が弁護士・他士業
最初に書くことどんな困りごとを解決する人かどの案件で、どう連携できるか
言葉づかい専門用語を使わず困りごとの言葉に置き換える業務名のままで通じる
ページの目的相談していい相手だと分かってもらう組む相手として検討してもらう
置くと効く要素プロフィール、よくある質問、動画・写真対応できる工程、連携の進め方
問い合わせの入口相談のきっかけを明示する(無料相談など)連絡手段と対応範囲を明示する

この表のとおり、同じ事務所でも、読み手が変われば一枚目に置く情報が入れ替わります。どちらが正しいという話ではなく、どちらに向けた一枚なのかを決めていないページが、結果としてどちらにも刺さらなくなります。

読み手を決めたあと、ページに載せる要素は何ですか?

プロフィール、よくある質問、コラム、動画・写真、強みの説明、相談のきっかけ。この6つを読み手に合わせて埋めていくと、ページの骨格ができます。それぞれ役割が違うので、まとめて一気に作る必要はありません。

  • プロフィール:誰に依頼するのかを判断する材料。経歴だけでなく、どういう考えで仕事をしているかまで書くと読まれます。書き方は士業のプロフィールの書き方で整理しています。
  • よくある質問:聞きたいけれど聞きにくいことを先に潰す場所。費用感、期間、持ち物、相談の流れなど。
  • コラム:継続して読まれる部分。説明の分かりやすさがそのまま印象になります。
  • 動画・写真:人柄を伝える部分。顔が分かるだけで心理的な距離が変わります。
  • 強みの説明:他と何が違うのか、依頼を決める基準に答える部分。
  • 相談のきっかけ:問い合わせの最初の一歩を作る部分。

6つを同時に完成させる必要はありません。読み手を決めたうえで、その人が最も気にすることから順に埋めていけば、未完成の段階でもページとして機能します。依頼までの流れをどう書くかは士業のホームページに問い合わせが来ない|依頼フローの書き方もあわせてどうぞ。

受付カウンターで来訪者と向かい合い、資料を見せながら説明している様子

キャッチコピーはどうやって決めればいいですか?

キャッチコピーを先に考えるのではなく、強みを先に言語化します。KBF(顧客が購買を決める要因)とUSP(他にはない独自の強み)という2つの切り口で書き出し、そこから言葉を選ぶと、形だけの一文になりません。

キャッチコピーが決まらないときは、たいてい言葉の問題ではなく、強みが文章になっていないことが原因です。順番としては次のように進めます。

  1. KBFを書き出す:依頼する側が何を基準に決めているか。早さなのか、費用の明瞭さなのか、話しやすさなのか、対応できる範囲の広さなのか。
  2. 不安を書き出す:依頼する前に引っかかっていること。いくらかかるか分からない、何を持っていけばいいか分からない、など。
  3. USBではなくUSPを探す:USP、つまり他ではなくここに頼む理由になる独自性を一つ決める。
  4. 1〜3を文章にする:そのうえで、一番短く言い切れる形をキャッチコピーにする。

強みを明示化して、文章としてきちんと伝えられると、問い合わせをする理由づけになります。逆に、強みが本人の頭の中にしかない状態では、どんな言い回しを試してもコピーが決まりません。決まらないのは文章力の問題ではなく、材料が揃っていないだけ、というケースがよくあります。

コラムには何を書けばいいですか?

法律が変わったときと、難しい処理を実際に調べながらクリアしたときです。この2つは司法書士の手元に必ず発生する素材で、わかりやすい言葉で書けば「この人は分かりやすく説明してくれる人なのではないか」という印象につながります。

コラムのネタを探そうとすると書けなくなりますが、仕事の中で自然に発生する出来事に絞ると、ネタ切れが起きにくくなります。士業の場合、次の2つが安定した供給源になります。

  • 制度・法律が変わったとき:変更点そのものより「誰が、いつまでに、何をすればいいのか」を平易に書く。
  • 難しい処理を調べてクリアしたとき:どこでつまずき、何を確認して解決したのかを、専門用語を避けて書く。

後者は特に価値があります。調べながら解決した過程は、同じ状況の人が検索する内容とほぼ一致しますし、専門外の人が読んでも「こういう面倒を代わりに引き受けてくれる人なのだ」と伝わります。

注意点として、制度や手続きの内容は改正されることがあります。記事には「いつ時点の情報か」を明記し、読者には最新の公式情報や専門家への確認を促す一文を添えておくのが安全です。発信の続け方は制度が毎年変わる士業は発信のネタが切れないでも扱っています。

動画や写真は載せたほうがいいですか?

載せたほうが伝わります。動画や写真を出すことで、この人は悪い人ではない、という対外的なアピールができます。文章では埋めにくい人柄の部分を、短時間で伝えられる手段です。

士業への依頼は、金額や内容以前に「この人に話していいのか」という判断を含みます。顔も声も分からない相手に、相続や会社の事情を話すのは、依頼する側にとってハードルが高い行為です。

そこで、顔写真を1枚載せる、数分の自己紹介動画を置く、といった対応が効きます。凝った撮影でなくても構いません。表情と話し方が分かることが要点で、きれいに作り込むことが目的ではありません。

動画を作るなら、内容は業務説明より「どういう相談が多いか」「相談のときに何を持ってくればいいか」といった、相手の不安に答えるものが向いています。見た人が、会う前に一度会ったような感覚になれば、問い合わせの心理的なハードルが下がります。会って話せることを明示する書き方は士業ホームページに「直接会えます」と書くでも整理しています。

問い合わせの入口はどう設計すればいいですか?

相談のきっかけを明示します。たとえば「30分無料相談受付中」のような一文を置くと、何をすればいいかが具体的になります。手段は読み手に合わせて、メール・LINE・SNS・電話から選びます。

問い合わせが来ないページの多くは、連絡先が無いのではなく、連絡していい理由が書かれていません。「お気軽にお問い合わせください」だけでは、何を相談していいのか、費用が発生するのかが分からないままです。

そこで、入口を具体的な行為に置き換えます。「30分無料相談受付中」のように、時間と条件が書かれていれば、依頼を決める前の人でも押せます。そのうえで、ホームページ全体をこの入口に向かって設計していきます。

手段の選び方は読み手次第です。日中に電話が難しい人が多いならフォームやLINE、すぐに話したい相談が多いなら電話を前面に出す、という判断になります。複数置く場合も、一番押してほしい手段を一つ決めて、そこを目立たせます。

なお、入口を整えても、フォーム自体が動いていなければ問い合わせはゼロのままです。送信テストは月に1回など頻度を決めて行うと安心です。

読み手を決めて作り直すと、どれくらいで効果が出ますか?

検索から問い合わせが入り始めるまでは、一般的に半年から一年が目安です。積み上げ型の施策なので時間はかかりますが、積み上がったものは簡単には崩れません。

読み手を決めてページを作り直すと、まず変わるのは「読まれ方」です。自分向けだと分かった人が最後まで読み、問い合わせの文面が具体的になります。この変化は比較的早く出ます。

一方、検索から新しい人が入ってくるまでには時間がかかります。目安として半年から一年を見ておくと、途中で手を止めずに済みます。その期間を短縮しようとして読み手をぼかすと、結局どちらにも届かないページに戻ってしまいます。

進め方としては、次の順序が無理がありません。

  1. 読み手を一つ決める(経営者か、連携先の他士業か)
  2. その読み手向けに、トップページの説明と入口を書き直す
  3. プロフィールとよくある質問を埋める
  4. 法改正と、調べて解決した処理をコラムにして積む
  5. もう一方の読み手向けのページを追加する

自社サイトが今どの段階にいるかを先に把握したい場合は、自社サイトは今どこか|「見つかる」までの4段階で現在地を測るが目安になります。

よくある質問

司法書士のホームページで、料金は載せたほうがいいですか?

読み手によって判断が変わります。相場を知らない経営者や個人が読み手なら、金額そのものより「何にいくらかかるのか」の内訳や目安があるほうが不安が減ります。連携目的の他士業が読み手なら、料金より対応できる工程や連携の進め方のほうが判断材料になります。まず読み手を決めてから判断してください。

経営者向けと他士業向け、両方に対応したい場合はどうすればいいですか?

1枚のページに混ぜず、ページを分けます。トップページで読み手を分岐させ、経営者向けには困りごとの言葉で書いた説明ページを、他士業向けには連携の進め方を書いた提案ページを用意します。同じサイト内で両方に応えられます。

コラムのネタが続きません。何から書けばいいですか?

法律や制度が変わったときと、難しい処理を実際に調べながらクリアしたときの2つが安定したネタ元です。どちらも仕事の中で自然に発生します。専門用語を避けて、誰が・いつまでに・何をすればいいのかの形で書くと、分かりやすく説明してくれる人という印象につながります。

「30分無料相談」のような入口は、必ず無料にしないといけませんか?

無料であることが条件ではありません。要点は、何をどれくらいの時間でしてもらえるのかが具体的に書かれていることです。条件と時間が明示されていれば、依頼を決める前の人でも最初の一歩を踏み出しやすくなります。

書き直してからどれくらいで問い合わせが増えますか?

検索から問い合わせが入り始めるまでは、一般的に半年から一年が目安です。成果を保証するものではありません。その代わり、読み手を定めて積み上げたページは短期的な変動で崩れにくく、後から追加するページの基準にもなります。

参考・出典

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